月末、社員が「先月の分もあります」と、折りたたんだレシートを財布から出してくる。手土産に接待、ちょっとした交通費。この精算のもたつきをなくす方法は、はっきりしています。立替が起きたときのルールを、3つだけ決めておくことです。
決めるのは、いつまでに出すか、何を出すか、どう返すか、の3つです。社員がだらしないわけではありません。ルールがないから、もたついていただけです。この3つが決まると、月末のレシートの束と「これ、いつの分ですか」のやり取りが消えていきます。
私が支援に入らせていただいたクライアントでも、月末に記帳の資料を税理士へ渡したあとで「この支払いの領収書が入っていません」と指摘され、立て替えた本人に慌てて聞いて回る場面を何度も見てきました。資料をまとめる時間より、探して聞いて回る時間のほうが長い月もあったほどです。
この記事では、小さな会社がすぐに決められる立替精算のルールを、順番に見ていきます。
立替経費は「本人しか知らない経費」になりやすい
会社の支払いは、大きく分けると3つしかありません。請求書で払う。会社のカードで払う。そして、従業員が立て替える。このうち立替だけは、取引先への手土産も、会食も、駅からのタクシーも、使ったその瞬間を本人しか知りません。レシートが財布に入ったままなら、会社の記録の上では、その支出はまだ存在していません。
請求・入金の確認と同じように、立替の精算も「本人は分かっているけれど、会社としては見えにくい」状態になりやすい業務です。しかも請求書とちがって、立替は本人が言い出さないかぎり、誰も気づけません。
流れで見ると、止まりやすい場所は決まっています。
財布の中、口頭のやり取り、現金の手渡し。この3箇所で流れが止まるたびに、月末の「探す・聞いて回る」が増えていきます。
決めるのは3つだけ
立替精算のルールというと、精算規程のような堅い文書を思い浮かべるかもしれません。小さな会社なら、そこまでは要りません。決めるのは次の3つです。
提出日は、月末の締めより前ならいつでも構いません。大事なのは、日付が1つ決まっていることです。「気づいたときに出してね」のままだと、レシートは月をまたぎ、財布の中で忘れられていきます。
用途のメモは、ひとことで足ります。手土産なら渡した相手先、会食なら同席者。これがあるだけで、税理士や会計の担当者から内容を聞かれたときに、即答できるようになります。
精算は、なるべくデータで残す
3つ目の「どう返すか」を考えるとき、あわせて見直したいのが現金精算そのものです。コクヨが発表した調査(2017年実施・出典)では、働く人が紙の書類を探す時間は1日平均約20分、年間では約80時間にのぼるという結果があります。仕事の時間のうち、探す時間は思っている以上に大きい。だとすれば、探す時間そのものを減らす工夫に価値があります。なるべくデータにしておく。それだけでも、整理はぐっとしやすくなります。
その一歩は、今の現金精算に、だれが、どのように対応しているかを把握することからです。どんな用途に使われていて、領収書はだれが受け取り、どう管理されているのか。そこが見えてはじめて、手段の検討ができます。クレジットカードの支払いに切り替えられる支払先はあるか。紙以外の形で領収書を残せないか。自社の状況に合わせて、しっかり見ていきます。
一方で、変えられない前提もあります。業種や業務の事情で、どうしても現金で支払う必要がある経費。現金支払いが大部分を占める会社なら、カードへの切り替えは有効な手段にはなりません。どこが変えられて、どこが変えられないのか。その見極めで、自社の対応は変わってきます。
たとえば紙の領収書が多い会社なら、まず支払先を見ます。カードで払える支払先が多ければ、カード精算に寄せていく。少なければ、現金精算のときに領収書をスマホで撮影して保存し、原本は経理へ渡す。どちらの道でも、探す場所は減っていきます。
小口現金も同じです。手提げ金庫の残高を数えて合わせる時間は、置いている現金の分だけ発生します。紛失や数え違いのリスクも、置いている分だけついて回ります。どうしても現金が要る用途だけに絞っていくと、その時間とリスクごと減らせます。
さらに進めるなら、会社のカードを従業員に渡して、立替そのものを減らす道もあります。ただ、カードの選び方や会計ソフトとの連携は、それだけで1つの話題になります。この記事では「ルールを3つ決める」までにとどめ、その先は別の記事で扱います。
立替精算簿は6列で足りる
ルールを決めたら、受け皿を1つ用意します。専用のシステムは要りません。Excelやスプレッドシートに、次の6列があれば足ります。
ポイントは精算日の列です。ここが空欄の行が、まだ返していない立替。埋まっていれば完了。月末に「精算し忘れていないか」を聞いて回らなくても、表を見れば分かります。
まずは先月と今月の立替を洗い出す
ルールを決める前でも、今日できることがあります。先月と今月、社員の立替がなかったかを一度洗い出してみてください。確認するのは次の3つです。
- 誰が立て替えたか
- いくらだったか
- 精算が済んでいるか
聞いてみると、財布に入ったままのレシートや、自腹のままになっていた駐車場代が出てくることがあります。それが出てきた時点で、この洗い出しは成功です。ルールを決める理由を、全員が実感できます。
チェックリスト:まず確認したいこと
- ☐ 立替の提出日が決まっている
- ☐ 領収書に用途のメモ(相手先・同席者)を添える決まりがある
- ☐ 返し方(振込か現金か)が決まっている
- ☐ 未精算の立替が、表を見れば分かる
- ☐ 小口現金の用途が絞られている
- ☐ カードに切り替えられる支払先を把握している
全部にチェックが入らなくても問題ありません。入らなかった項目が、これから決める候補です。
注意点
手土産や接待の費用が交際費・会議費のどれにあたるか、経費として認められるかどうか、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応は、会社の状況によって判断が分かれます。迷う内容は、税理士や専門家にご確認ください。この記事は、立替精算の流れを整理するための一般的な考え方をまとめたもので、税務判断は含みません。(最終確認日:2026年7月15日)
立替精算は、提出日を決めて、用途をメモして、返し方を決める。この3つで回り始めます。精算規程もシステムも、そのあとで間に合います。まずは先月と今月の立替の洗い出しから始めてみてください。

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